株式会社博報堂
山本 泰士様

7月定例会にて、1980~2000年頃に生まれた「ミレニアル世代」と呼ばれる若者層の消費行動や、新時代のマーケティングに関する研究結果をご講演頂きました、株式会社博報堂の山本氏に、今回はebsとして単独インタビューさせていただきました。定例会の詳細はこちら

株式会社博報堂 買物研究所 ストラテジックプラニングディレクター 山本 泰士様
―ミレニアル世代家族でも都市部と地方では行動傾向が違うように感じます。アプローチ方法や販促手法は変わってくるのでしょうか?
山本 泰士氏:
我々が独自に行った調査から都市と地方を比較してみると…
・地方ほど実家の家事や買物支援が豊富
・地方ほどお金にシビアで「失敗しない」買物を求める

などの都市と比較した特徴はあるのですが、特にECという視点で見ると地方ほど「商品が多すぎて選ぶのに時間がかかる」という不満を抱えています。

お金にシビアで「間違いのない買物をしたい!」という意識が強いので、商品をしっかり吟味したい気持ちは強い。
けれど、吟味するのに商品が多すぎると困る…というジレンマを抱えているのです。

地方であればあるほど、商品数を絞り込み「安さの保証」「評判の保証」をしっかりした上で商品を販売する必要がありそうです。

分析の詳細は博報堂買物研HPにも掲載しておりますのでぜひご覧ください。
http://www.hakuhodo.co.jp/archives/column/34708
―欲求流去の時代、タイミング選びから常時最適へというお話しがありましたが、オンデマンドやオートメーション化は中小零細企業にはハードルが高いような気がします。「欲しい」と思ったその直後の最も気持ちが盛り上がるタイミングで購入につなげる方法として何か事例などはありますか?
山本 泰士氏:
これは酒匂さんのお話にも通じる部分があるかもしれませんが、
近年ですと商品が欲しくなったタイミングに「チャット」などで気軽に質問をできるようにして、いわば遠隔で接客をすることで購買転換率を上げるという方法がよくされております。
最近ですとLINEのビジネスアカウントもありますので、こう言ったものを活用することで「欲しい時に、すぐ疑問を解決し立ち止まらずに購買に結び付ける」ことができるのではないでしょうか?
チャットで質問する=優良見込み顧客として、割引などのより背中を押す施策をしてもいいかもしれません。
―シェアードショッパーマーケティングについて、初めて聞き、目から鱗でした。ターゲットを擬人化した「ペルソナ」は意味があるのか?疑問に思ってきました。ペルソナ自体が限界なのか、それとも「人」ではなく「ニーズ」や「想い」にターゲットを設定したほうが良いのか、どちらのほうが良いと思われますか?
山本 泰士氏:
商品開発やブランドビジョンを構築する時に「どんな人をお客様にしたいのか?」というペルソナはまだまだ意味をもつと思います。
例えばスープストックトーキョーを創業する時に、創業者はこのお店を訪れる理想顧客である「都会で働くあるOL」のイメージをペルソナだけでなく、朝起きてどんな仕事をして、どんな気持ちでお店にくるのか?詳細な日記まで書いて想像し、店舗・メニュー、ブランドを作りあげたと言います。
ただ実際に創業後「商品を売る」「人を動かす」という現場では話が違ってきます。
実はスープストックトーキョーのお客様はOLだけでなく中高年の男性サラリーマンにも多く活用されている、なんてことが話題になったこともありました。
自社の商品が人を引き付ける要素は一つではありません。
先ほどのスープ屋さんの例で言えば「会社で忙しく働くOLさんが、帰り途にホッとひといきつける場所」というペルソナに対するニーズも確かにあるでしょう。
しかしそれ以外にも「男性サラリーマンの野菜を食べられる簡単健康食」という当初は気付かなかったニーズもあったわけです。
「機能や商品特徴」という点で見れば1つしかなくても、その1つの特性を「どこで」「どのタイミングで(一日の中での時間や季節)」「誰が見るか」によって見え方は変わり、刺激できるニーズも変わって来ます。
仰る通り「ニーズ」は重要なのですが、
そのニーズを生み出す、「場所」「タイミング」「ターゲット」によってどんな「課題や困りごと/欲求」があるのか?
そこに自社商品を「どう見せれば、話せば受け入れられるのだろうか?」
このような発想をすることによって「1つの機能・特徴」「1つのペルソナ」のみにとらわれない幅広く「モノと人を動かす」発想が出来るようになるのではないでしょうか?
ただ、繰り返しになりますが「商品・売場」を考える上で「誰が?」というターゲットはマーケティングの基本ですので、その一歩としての「ペルソナ」も忘れないでおきたいものです。
―当イーコマース事業協会は「売上げ向上・技術向上のための勉強、並びに会員相互の会員交流・情報交換を通じて、電子商取引を含む健全なる情報化を社会に普及させることを目的とする」団体でありますが、ご講演を終了してみてのご感想や、定例会の印象などお聞かせいただけると幸いです。
山本 泰士氏:
みなさま大変熱心な方々で貪欲に学ぼうと言う姿勢がひしひしと感じられました。
本当の「売り方」のイノベーションはこのような現場から生まれるのだな…と凄みさえ感じた次第。
これからのご発展を心より祈念しております!
○講演タイトル
「なぜ買われないのか?」その課題に挑む、最新ショッパーマーケティング
~局地戦で中小企業が大手に勝つ方法&資金調達だけじゃないクラウドファンディングの可能性~

○講師プロフィール
株式会社博報堂 買物研究所 ストラテジックプラニングディレクター
山本 泰士様 氏

1980年神奈川県生まれ。
2003年東京大学教育学部卒、 同年、博報堂入社。
マーケティングプランナーとして教育、自動車、飲料、トイレタリー、外食などのコミュニケーションプランニングを担当。
2007年より博報堂大学こどもごころ製作所プロジェクトに 参加し、クラヤミ食堂など体験型コンテンツの企画、運営を担当。
2011年より博報堂生活総合研究所にて、生活者の未来洞察コンテンツの研究、発表を担当。
「総子化」「インフラ友達」「デュアル・マス」などの制作・執筆に関わる。
2015年より博報堂買物研究所に異動。近未来の買物行動予測研究と、買物行動を起点としたマーケティングに従事。


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