はじめに
イーコマース事業協会(会員数209)は、日本で最も歴史があり、日本最大級の“イーコマース(EC)事業者の商工団体”として活動している団体で、“イーコマースの経験・知識・情報を持った人が集まる場” を合言葉に、関西を中心に 日本全国からネットショップ関係者が定期的に集まって互いに学びあっています。
私はイーコマース事業協会会員で、広報委員会に所属の森田由香と申します。
先日行われた「第181回定例会」の参加者の1人として、当日のレポートを報告致します。
今年最後の定例会となる第181回定例会は、は、11月14日14時30分から、新大阪丸ビル新館の事務局でのパブリックビューイング会場と、オンライン(ZOOM配信)からでの聴講形式が準備され、ハイブリッド形式での開催となりました。
まだまだ続くコロナ禍で、絶やすことなく開催を続けられるよう、会の運営やご準備に尽力頂いている皆さまに心から感謝致します。
参加人数は会員:パブリックビューイング:13名 Zoom:67名。
第1講演は、「ネットショップグランプリ受賞記念講演」。
ベルヴィ株式会社 代表取締役社長 宮﨑義則様にご登壇頂きました。
テーマは「素人集団からプロ集団へ!ソムリエ@ギフトが挑戦する2021年度の成長戦略」。
宮崎様に続き、ゼネラルマネージャー 泉田雅外様にもご登壇頂き、「新時代に適応できる柔軟な組織作りとEC未来予想図」とのテーマでのお話しを拝聴しました。
第2講演は、「2021年どうなる?メディア編集長達が語るイーコマースの未来」と題し、株式会社インプレス ネットショップ担当者フォーラム編集部 編集長 瀧川 正実様と、株式会社日本流通産業新聞社 編集局デスク 手塚 康輔様をパネラーにお迎えし、当会 定例会委員会委員会 尾崎委員長の進行のもと、ディスカッション形式でのお話しを拝聴しました。
第1講演
ベルヴィ株式会社 代表取締役社長 宮﨑義則様 ご登壇
講演名 「素人集団からプロ集団へ!ソムリエ@ギフトが挑戦する2021年度の成長戦略」
ベルヴィ株式会社さまは、ソムリエ@ギフトというギフト専門店を運営されています。
宮崎さまは、お父様のギフト専門店を引き継ぎ2005年に楽天市場に出店されました。
当時は、専門的な知識やスキルを持ったスタッフもいらっしゃらず、ショップ運営や制作のために、様々な模索を重ねながら奮闘されていたそうです。
月商1000万突破となった、5年目以降から、少しづつ専門知識や技術をもった人材が集まりだし、今のソムリエ@ギフトが出来上がってきたとのことでした。
べルヴィ株式会社さまの事業には、3本柱、「ECモール店」「本店(独自ドメイン戦略)」「コンサルタント事業」があり、それぞれに、
「ECモール店」 → 売上の規模・シェアの拡大、認知度の向上
「本店(独自ドメイン戦略)」 → ブランディング構築、モール依存からの脱却
「コンサルタント事業」 → 収益率の向上、リソースのコスト削減
との目的、役割があるとのことでした。
今回のご講演では、 「本店(独自ドメイン戦略)」について詳しくお話し頂きました。
特に、ソムリエ@ギフトさまは、出産祝いに力を入れておられ、「出産」を起点とするプラットフォームを構築するべく、様々な施策をされています。
今、出産人口は年間90万人と言われているとのこと。その方の多くに対してアプローチできるビジネスモデルを構築すべく、大手さんにはないソムリエ@ギフトさんならではのサービス(圧倒的な付加価値)を、様々な角度からアプローチされています。
その一例として、北欧のデザイナーと契約し、ギフト包装用の包装紙を、北欧デザインのものを数種類準備されたそうです。
またギフト専門店ならではの複雑な注文フローを効率化、省力化するため、システムの大幅なテコ入れをされたそうです。
商品についても、沢山の人気ショップさんとコラボし、ソムリエ@ギフト専用のギフトセットとを作ってもらったりと、ここでしか買えない商品を提供されています。
買い易く、沢山の商品選択肢があり、包装紙なども含め、ここで買いたいと思ってもらえるギフトショップを目指しておられます。
また、eカタログギフトへの展開を推進されています。
カタログギフトは既存の紙媒体ではなく、WEB上から選んで頂く「eカタログギフト」という形を推し進め、それによって、これまで紙状では実現困難だったことにチャレンジされています。
「誰に贈るのか、どういった目的で贈るのか」というターゲットを細分化し、ピンポイントでの商品構成ができる他、無限の可能性を感じ、この分野に、今後さらに力を入れられるご予定だそうです。
そして、今から本気でSEO対策とSNS対策も進めるとのことでした。
昨年5月に新たにドメイン取得をし直し、独自ショップ(本店)について、本気でSEO対策とSNS対策を始められたとのことでした。
コンテンツの作り込みは専用スタッフを置き、日々取り組まれているそうです。
商品を売ろうとせず、ソムリエ@ギフトのファンになってもらえるよう、本当にお客様が必要とする情報のコンテンツ作りやSNSへのアプロ―チを心がけておられるとのことでした。
最後に、まとめとして、宮崎様は、「自社のサイトを追求していけば、無限の可能性があると思っている。」とおっしゃっていました。
今こそ自社サイトを!
コロナ禍でEC事業者が比較的好調である今、未来への投資を!
との強いお言葉が、とても心に残ったご講演でした。
ゼネラルマネージャー 泉田雅外(センディー)様 ご登壇
講演名 「新時代に適応できる柔軟な組織作りとEC未来予想図」
泉田さまは、前職の某ゴルフショップさんで、楽天ショップフォブザいやーなど数多くの受賞歴をお持ちであり、楽天ネーションズの第1期リーダーでも活躍されたご経歴の持ち主です。
最初のテーマは、5Gサービス開始でネット環境が変わる!10年に一度の大革新、について。
まず、5G利用普及が進むには、まだ最低2~3年かかるとの予測であり、当面は4Gと5Gが併用の環境になるであろうとのことでした。
そして、5Gになって、何が変わるのか?という点については、
・データの遅延の軽減(スポーツ業界が一番恩恵をうける?)
・あらゆるものの遠隔操作が可能になる(工場ロボットの遠隔操作や、ドクターヘリ内など遠隔医療の実現)
・複数機器の併用接続が可能
・携帯パケット通信の上限制限がなくなり、低額利用が可能に
・さらなるネット利用の増大とEC市場の拡大化
・ECモール以外からの販売チャンネルの増加(SNSなど)
・家電のネット連動化がさらに普及
・地上波よりもネットでの閲覧がスタンダートに
・キャッシュレス決済の拡大
・といった点をあげておられます。
また、購買導線についても、環境が整い、求めるものへの導線がよりシンプルになってきているため、検索すらしなくてよくなるのではないか、とのことでした。
販売チャンネルや、入り口、導線も変化してりいるため、常に今のトレンドや情報を取り入れ、対応していく必要があるのだろうと思いました。
また、商品の魅せ方、情報の出し方もそれに伴い変化させていかないといけないこともご紹介頂きました。
また、この新時代に向けて必要な、柔軟な組織作りについてもお話し頂きました。
当たり前でありながら、継続していくことが難しい組織作りの基本を、具体的に、なぜこれが重要なのか、という理由付けも丁寧にご説明頂きました。
また、自社で実施されている事例もご紹介頂きました。
You are happy, I am happy
これがベルヴィ株式会社さまの理念であり、健全でコミュニケーションがしっかり取れている良い組織作りが、新時代に向かっていく原動力になることは、いつの時代も普遍であり、変わるべきこと、変わらぬべきことの大切さも改めて感じたご講演でした。
第2講演
株式会社インプレス ネットショップ担当者フォーラム編集部 編集長 瀧川 正実様
株式会社日本流通産業新聞社 編集局デスク 手塚 康輔様 ご登壇
講演名 「2021年どうなる?メディア編集長達が語るイーコマースの未来」
EC業界において知らない人はいないであろう2大メディア編集長のお二方をパネラーにお迎えし、定例会委員長 尾崎一索さんモデレータのディスパッション形式でのご講演。
とても楽しみなご講演でした。
最初のテーマは、コロナ禍で変わった消費者心理について。
瀧川さまから、EC市場について、コロナ前、後のデータ比較から見てとれることとして、以下のことを挙げて頂きました。
コロナ後は、
・EC利用は全世代型にデジタルシフトしており、1人当たりの消費金額も伸びている
・ジャンルは、ゲームなどのコンテンツ配信系、家電、DIYが伸びている
・配送料については無料でなくとも許容できるようになり、配送料負担について寛容になっている
・商品やサービスの質より、コロナ対策をしっかりしているかどうがを重要視している
・ウィルス対策の意識、対策度が店舗利用の選択肢に大きく起因する
・商品、サービスの質・スピード・価格よりも、感染対策を重要視
以上をふまえ、EC事業者であっても、自社のコロナ対応、取組みについてサイトに明記した方がよいとのアドバイスでした。
また、手塚さまからは、「コロナで皆が優しくなったように感じる」とのご見解があり、・リテールセラピー 癒しのための購買活動が起こっているように感じる、とのことでした。
次のテーマは、モールについて。
各モールについての見解は以下の通りでした。
【楽天市場】
・EC市場全体が拡大したのと同じく、く、楽天市場全体も売上規模はコロナ後拡大。30~50%増となっている
・1人あたりの購入額も10%増、リピート率も増。
・シニア層のユーザー増。楽天シニアアプリでのシニア層囲い込みが結果に出ている
【Yahoo!shopping】
・前年度比については、zozoさんの消費を除くと微増?
・あまり伸びなかった原因として、PayPay還元率の低下が影響?
・LINEとの統合が延期になったが、来年以降の仕掛けが気になる。2021年の動向は注視すべき。
【Amazon】
・なかなかデータが公開されていないため、明確な判断は難しいが、プライム動画利用もあり他モールと同様拡大したと思われる
・有料のAmazonコンサルティングをスタートする?
【au Pay マーケット】
・Auの施策が当たった場合は伸びている
・KDDI auポイントはAu Payマーケットでかなりお得に使える(2倍?)
【Qoo10】
・アプリダウンロード数増大した様で、利用者増と思われる
・かつては若年層の女性メインユーザーだったが、今はユーザー世代も性別も多様化してきている
とのご意見がありました。
また、Instagramについての意見交換もありました。
今後、インスタ経由の購買もスタンダードになり、#(ハッシュタグ)からやSNSの仕様変更により直接ECサイトやページへ誘導できる導線が整いつつあるため、今後も伸びていくと思われる、とのことでした。
また、瀧川さまより注目のSNSとしてPintarestのご紹介がありました。
ユーザー数は全世界4億人以上。商品やアイデアとの出会いを求めているユーザーが多く、日本はまだ広告がついていない状態であることから、ブルーオーシャン市場であるとのことでした。
そして、今なにかと話題になる、ライブコマースについては、瀧川さまは、日本人の国民性を考えると、あまり衝動的購入はしないのでは?とのご見解でした。
その場で購入させるのではなく、アーカイブして資産としてECサイトに蓄積していく方がよいのでは?とのことでした。
手塚さまからは、ブランディング高めるためのツールとしての活用が良いのではとのことでした。
今後の物流については、大手のメジャー配送業者ではなく、第3の配送キャリアとして、個人配送にも注目。ここが今後伸びてくると予想し、個人配送の利用も選択肢のひとつになるのでは?とのことでした。配送スピードについても、ゆっくり配送を選択したお客様に何かしらのインセンティブを与えることで、配送の平常化に繋がる流れも生まれていることでした。
2021年の注目ポイントとして、手塚さまからは、ECモールはさらに拡大化するだろうことと、第3次越境ECブームがきているとのお話しもあり、中国以外のアメリカ、ヨーロッパからの購入も増えるだろうとのご見解でした。
瀧川さまからは、サスティナブル商品(サスティナブル:人間、社会、地球環境の持続可能な発展)やSDGs(持続可能な開発目標)という考え方がスタンダードになり、そういった方向性をもつモールも生まれるだろうお話しをご紹介頂きました。
今回の定例会の聴講のまとめとして、
このコロナ禍中の真っ只中にいる状況でも、時代はどんどん進んでおり、新しい考え方、価値観、形、技術などが生まれていることを実感するご講演でした。
開式の辞で吉村会長が、過去の疫病流行が産業革命や技術革新の起点になってきた歴史のご紹介がありました。
ついコロナ前の生活と比較し、未だ慣れない不自由さを感じてしまいがちですが、今この瞬間に大きな変化を遂げる過渡期の最中に、私たちはいるんだと改めて強く感じました。
宮崎さまからも、今この時期に未来への投資を!とおっしゃっていたように、この状況に慌てふためくのではなく、落ち着いて、これから向かう新時代へ、今何ができるかをしっかり考え行動することの大切さを感じました。
貴重なご講演、誠にありがとうございました。
情報交換会 旬魚旬菜 きらく 新大阪
定例会終了後は、情報交換会
定例会が終了した後は、「旬魚旬菜 きらく 新大阪」にて今年の2月以来8か月ぶりに情報交換会が新型コロナウィルス感染対策の上、行われました。イーコマース事業協会は “業種・業態・地域・経験・年齢・立場” が異なる会員同士が、イーコマースという共通のテーマで対等の立場で学んで、会って、お互いに情報交換しながら自分のビジネス向上の気づきを得る場として情報交換会を行っています。
今回の情報交換会は16名が参加し、お互いに知見を交換しあったり、相談しあったり、激励しあったりしていました。
オンライン(ZOOM)での全国ECサミットを開催の予定です。
第179回定例会は9月11日にCIVI研修センター新大阪東で開催予定です。
イーコマース事業協会の定例会についての詳細は、こちらをご覧ください ≫ https://www.ebs-net.or.jp/regular_meeting/
2020年11月25日 株式会社モッククリエイト 森田由香(広報委員会)