竹中平蔵様

国のEU脱退、米国での新しい大統領の誕生など海外でも大きな変革が起こった2016年。
グローバル経済や政治情勢が、日本国内の経済環境や政策方針へ影響を与えていく中、今後10年間で日本経済がどのような変化をもたらし、企業はどのような運営をしていけばよいのか?
事業戦略の観点を踏まえて、ご講演頂きました竹中氏に今回はebsとして単独インタビューさせていただきました。  定例会の詳細はこちら

博士(経済学)竹中平蔵様
―竹中先生は、インターネット通販でお買い物をすることがありますか?
竹中平蔵氏:
私自身のアドレスを使うのはちょっと嫌なので、娘を通してやっています(笑)
買うものはやっぱり本が多いですね。でも、ちょっとしたものは買いますよ。シャンプー買っといて、とかいう感じで。
―ヤマト運輸の即日サービス撤退などでわかるように、運送業の人手不足の影響が顕著に運送料値上げという形で私達小売店にも直面しています。
ヤマト運輸の高速道路自動運転への動きなどお聞きしていますが、 実際、すぐに運賃やサービスに反映されるのは難しいと思います。
本日、ご講演の中でもお話しいただきました「ライドシェア」「AI」「自動運転」などを活用し運送サービスやEC事業に取りいれられている海外の事例はございますか?
竹中平蔵氏:
自動走行はまだ各国で模索の段階なので、例えば駐車場からホテルの玄関まで自動走行するというのはできますけども、
まだ大きな規模にはなっていないです。むしろ、他の国はどうするかいうと、まず、移民なんですよ。
足りない分を自動走行で補うのではなくて、人を連れてくるという形でやっている。
日本の場合は、色々な意味で現状ではそれは難しくて、自動走行に期待するところはすごく大きい。
逆にいうと、日本ではそれだけ自動走行にニーズがある。
もう一つのニーズは、高齢化ですよね。
高齢者が運転すると危ないですから、そういう意味では、日本には、自動運転への潜在的ニーズがある。
―「ニーズはあっても、日本は規制の多い国ですよね。」
竹中平蔵氏:
ニーズはあるけど、規制があるからできないわけです。
その規制を外すために「サンドボックス」(砂場)をやるわけです。
どういう規制が邪魔になるかがわからないんです。
普通、今までだったら、この規制が邪魔になるから取ってくれと「特区」を作ったりできたのですが、何があるかわからない場合は、サンドボックスのようなところでやるしかない。
何が出てくるかわからない。
―「産業界から特区の要望を出すこともあるのですか?」
竹中平蔵氏:
もちろん、実際に実行するのは自治体ではなくて、企業なので、
企業がアイデアを出してそれに対して首長さんが賛同する場合に「特区」が成立する。
企業からいっぱいアイデアは出るんです。問題なのは、首長です。例えばライドシェアに関して企業からアイデアが出たとしても首長がやる気があるかどうかです。
―私達EC事業の仲間でも人手不足、人員確保に非常に苦労しています。
竹中先生は、多様な働き方、移民受け入れ、AIの活用など提案しておられますが、 この会では10人以下の少人数で運営をしている会社も多く、知識や技術を養って他社と差別化している会社も多いです。そんな少人数の会社でこの多様な働き方などを、どううまく取り入れていくかのアドバイスがあればお聞かせください。
竹中平蔵氏:
多様な働き方っていろんな多様性があると思うんですよね。
例えば、今の大企業はほとんどが、まだ兼業を禁止しているでしょう。
我々は兼業禁止を外すべきだといってきて、ようやくいろんなものが出てきた。
そうすると、例えば、大企業の人材を夜、活用するってことだってできるじゃないですか。
大企業でも、まだまだ若手で夜も働きたいという人はいっぱいいるわけです。
だから働く時間だけを規制するというのは、非常にナンセンスな話で、
働きたくない人の為に、ないしは、健康を守る為に、最低限の時間規制は必要ですけれども、いっぱい働きたい人の邪魔をしたらダメですよね。
わかりやすい一つの例ですね。
ひょっとしたら、例えば10人の企業がお互いの従業員をシェアすることだっていいですよね。
Aさんは、この仕事が得意、Bさんはこの仕事が得意、それぞれ、お互いの会社の仕事をやればいいじゃないですか。
―「ヨーロッパはワークシェアリングというのがありますよね?」
竹中平蔵氏:
ヨーロッパでいうワークシェアリングというのは意味合いが違っていて、
普通、ワークシェアリングというのは、一人の時間が長く働きすぎないように、
みんなで仕事をやりましょうというのがワークシェアリング。
それは、雇用を確保するためにする。
日本は、「雇用は必ず確保しましょう」とはいいますけど、それは違うんです。
今、日本の場合、雇用は確保できているんです。
日本は、雇用は確保できているけど、人手を確保することのほうが難しい。
―現在、日本の人口減、高齢化などの背景から、海外のマーケットを対象とした越境ECが注目されています。竹中先生は、日本のEC通販・EC事業が、
海外でシェアを広げる可能性についてどのような見解をお持ちですか?
竹中平蔵氏:
イーコマースというのは、そもそもが、日本も海外も関係ないわけで、
日本のものを海外で売っても構わないし、海外のものを日本で売っても構わないわけです。 そういうことをイーコマースというのはすでに確立してきている。
可能性はものすごくあって、あとは、そのシステムをどう作るかだけだと思います。
―最後に、当イーコマース事業協会は「売上げ向上・技術向上のための勉強、並びに会員相互の会員交流・情報交換を通じて、電子商取引を含む健全なる情報化を社会に普及させることを目的とする」団体でありますが、ご講演を終了してみてのご感想や、印象などお聞かせいただけると幸いです。
竹中平蔵氏:
すごく強い印象がありますよ。
みなさんものすごい熱心。
第4次産業革命の話とかっていうとですね、多くの方が自分より遠いところの話だというように感じられるのですが、みなさんは、相対的に自分にわりと近いところの話だと思って、 それに関連する周辺分野でお仕事できる可能性があると考えておられる。
そういうところから次の時代が出てくるわけで、ウーバーだって、エムビーアンドビーだって、そういうところから出てきたわけです。
その可能性をぜひ否定しないで頑張ってほしいと思います。
○特別講演タイトル
「激動の世界と日本経済」

○講師プロフィール
慶應義塾大学名誉教授、東洋大学教授。博士(経済学)
竹中 平蔵氏
1951年、和歌山県生まれ。 慶應義塾大学名誉教授、東洋大学教授。博士(経済学)。
一橋大学経済学部卒業後、73年日本開発銀行入行、81年に退職後、ハーバード大学客員准教授、慶應義塾大学総合政策学部教授などを務める。
01年、小泉内閣の経済財政政策担当大臣就任を皮切りに金融担当大臣、郵政民営化担当大臣、総務大臣などを歴任。
04年参議院議員に当選。06年9月、参議院議員を辞職し政界を引退。
ほか公益社団法人日本経済研究センター研究顧問、アカデミーヒルズ理事長、㈱パソナグループ取締役会長、 オリックス㈱社外取締役、SBIホールディングス㈱社外取締役などを兼職。