株式会社タンク
増田 紀彦様 

2007年11月定例会でご講演をいただきました、 年間1000人以上の経営者や起業家と出会い、 アドバイスと激励を送り続ける、株式会社タンク代表の増田紀彦氏。今回は企業は永遠に発展し続けるための視点と方法論を実例紹介をふんだんに織り混ぜて伝授して頂きました。 定例会の詳細はこちら


株式会社タンク代表 増田 紀彦 様 

―企業が生き残っていくために「誰に?」「なにを?」を見直して成長を続けるための4つの選択の実例、非常に面白かったです。 特に印象的なのが生命保険代理店の実例でした。あのような従来マーケットに向けた新商品サービスというのは珍しいことなのでしょうか?
増田 紀彦 氏:
4つの選択肢をあらためて紹介しますと、以下のようになります。

1.従来マーケットに、従来商品を提供し続ける
2.従来マーケットに、新規商品を投入する
3.新規マーケットに、従来商品を投入する
4.新規マーケットに、新規商品を投入する

印象的だったと言われた、生保代理店さんの例は上記の2に該当します。具体的には、団塊世代のサラリーマン(あるいはOB)というセグメントだけにサービスをしぼり、セグメントの在職中に一時払いの保険商品を販売されている方です。

この方は、他のセグメントが必要とする種類の保険商品は取り扱わず、団塊世代にピッタリくっついて、この方々のライフステージの変化に合わせて提供する商品やサービスを、保険にこだわらず変化させていく戦略をとっています。講演の中で紹介したように、旅行代理店と組んで、世界一周旅行を販売したり、カルチャースクールと組んで、団塊世代男性向けの教室を斡旋したりと。 このように、狙ったセグメントの細かなニーズやウォンツの変化に応じて次々と異業種の商品やサービスを提供されている方となると、まだまだ実例としては多くないと思われます。一般的には、もう少し長いスパンで顧客の変化に対応した商品戦略を練るケースが多いでしょう。ただし、団塊世代の方々は2007年から数年間にわたって劇的にライフステージを変化させますし、その変化を経験する人の数がいかんせん膨大ですから、紹介した生保代理店さんのような取り組みが可能になるのです。
―今、注目されている団塊世代マーケットに効果的な商品・サービスとはいったいどういったものでしょうか?
増田 紀彦 氏:
とにかく2007年から09年にかけての3年間で、この世代の方々に支払われる退職金は50兆円とも53兆円とも言われており、実に大きな額になります。これは国の1年分の税収に相当する額です。この退職金だけを考えてもすごい市場であることは、誰にでもわかる話です。

さて、この資金の行方ですが、すでにほとんどの方が予想されているとおりで、旅行市場がもっとも注目されています。また、教養・教育といった分野へもかなりの支出をされると予測されています。ただし、若い世代とは異なり、様々な体験や知識を有している方々ですから、生半可なサービスでは見向きもされません。ですから旅行と教養をセットにした企画(たとえば「時代小説作家とともに訪ねる名城の旅」とか)のような、大胆で魅力のあるサービスを開発することか肝要でしょう。

また、住宅リフォーム、短期金融商品、健康関連商品・サービスも伸びるでしょう。もちろん、まだまだ働きたいというニーズもあるわけですから、職業訓練サービスや起業支援サービスといった分野も見逃せません。

さらに別の角度でいうと、この世代の方々は従来の高齢者の方々とは違い、基本的にデジタルデバイトが存在しません。言うなれば,パソコンを使い回せる大量の自由人が世に登場するというわけです。ですので、ネットショップなどの業態が注目されますし、ネットショップ側では、この世代の特性をかんがみて、商品揃えやページづくりなどをあらためて考えてみる必要があるでしょう。
―講演をお聞きした後、実際に自店舗で、経営者が常に注意しチェックしておくべき7つの脅威を行なってみました。競合の追い上げなどは気がつきやすいのですが、代替事業の登場に入る具体的な内容を改めて考え書き起こしてみるとかなり脅威で「これに追いかけられるとやばいな」と真剣に考えてしまいました。代替事業のことをもう少し深く探索してみると、成長を続けるための4つの選択が見つけられやすい気がしましたがいかがでしょうか?
増田 紀彦 氏:
おっしゃるとおりです。まず代替事業とは何かです。これは、消費者のニーズやウォンツの解決策を、まったく別の方法で提案してくる事業のことです。

たとえば、お腹を空かせている人がいるとします。こういう人を狙うビジネスといえば、一般的には食品産業や飲食店業が想起されます。何かを食べれば、空腹は解決できるわけですから。

ところが、空腹感を感じなくなる薬とか、いや、薬でなくてもかまいません。空腹感を感じなくなる音楽とか、そういう絵画とか、そんなふうなものが出回ると、これが食品産業や飲食店業の大きな脅威になることは自明です。セグメントのニーズは、「何かを食べたい」ではなく、「空腹感を何とかしたい」なのですから。

しかし、空腹の解決のためではなく、飲食店に足を運ぶ人もいます。「おいしいコーヒーを飲んでホッとしたい」とか。この人の根源的な欲求は、ホッとしたいですから、カフェの隣においしいしハーブティーを出すアロマサロンがオープンすれば、そちらへ行ってしまうかもしれません。

つまり代替事業とは、同じセグメントを狙った異業種のビジネスということです。これを自らが先回りして考えればいい、というのが秋吉さんのお考えですよね。まったくそのとおりです。現在のお得意さんたちを狙う異業種の商品やサービスが出てくる前に、自らがそれをやってしまえばいいわけです。まさに先手必勝です。

つまり4つの選択肢でいうところの【2.従来マーケットに、新規商品を投入する】という考え方に通じるのです。

さらにここから発想を逆転させてみることも必要です。自社の商品やサービスを、いままで展開していなかった市場に投入できないかをよく考えることです。つまり、あなたが、他者にとっての代替事業として登場し、その市場を奪いにいくという攻めの姿勢ですね。そのように考えていただければ何よりです。
○講演タイトル
『企業は永遠に発展を続ける』

■プロフィール
1959年生まれ。87年、株式会社タンク設立。
97年、起業情報誌「アントレ」創刊に参加。
同誌編集デスクを務めるかたわら、講演やセミナーを通じて年間1000人以上の経営者や起業家と出会い、アドバイスと激励を送り続けている。
現在、経済産業省委託事業「起業支援ネットワークNICe」のチーフプロデューサーとして活躍中。また、厚生労働省・女性起業家支援検討委員、中小企業大学校講師、(財)女性労働協会・女性経営者セミナー講師、ドリームゲート「事業アイデア&プラン」ナビゲーター、USEN「ビジネス実務相談」回答者なども務める。

著書に『起業・独立の強化書』(朝日新聞社)、
『正しく儲ける「起業術」』(アスコム)。ほか共著も多数。