株式会社 柳田織物
柳田 敏正様

6月定例会にて、「HPの裏側にあるもの~継続は力なり~ozieが考えるEC運営について」をテーマにお話頂いた、株式会社 柳田織物 専務取締役の柳田 敏正氏に、今回はebsとして単独インタビューさせていただきました。 定例会の詳細はこちら

株式会社 柳田織物 専務取締役 柳田 敏正様
―創業1924年の歴史を持つシャツ専業メーカーさんが、なぜネット通販事業を始めようと思われたのですか?
柳田 敏正氏:
1999年~2001年まで、大手量販店や専門店の卸売の営業をしていたのですが、商品ありきよりまず価格。価格でいえば当然ライバルの大手メーカーのほうに分があります。これは売れると自信を持って商談に臨んでも、価格で負けることが多々ありました。
またこのころから小売店と商社、小売店と海外工場の直接取引が徐々に始まりつつありま した。 このままの体制では弊社のような中小企業は、今は良くても数年後はどうなっているかわからない、もしかしたらなくなってしまうのではと感じました。 商品的に見れば、多少なりとも売れるだろうと思いましたし、前職(バーニーズ・ジャパ ンにて販売を経験)の経験から接客には自信がありました。 そこで小売を始めたいと思ったのですが、実店舗はなにぶん資金が相当かかります。 当時そこまでの余裕は弊社にありませんでした。
そこで目をつけたのがECでした。 ECの黎明期に成功された諸先輩方のお話を聞き、これだと思いました。 準備資金は少なくすみますし、なによりひとりでもメールを使ってOneToOneの対応がで きると感じた事が大きいです。 そこで2002年から ozieというECサイトを独自ドメインで立ち上げたました。
―さまざまな苦労がおありだったかと思いますが、ネット通販事業をここまで続けてこられた理由とは?
柳田 敏正氏:
起ち上げから軌道にのるまでの数年間、ネット通販で収益を上げていかなくてはいけない状況ではなかったことが大きいですね。当時は卸売が収益の大半を占めていて、それで会社がまわっていた状態でしたので。当時卸売を行っていた同業者が同じ時期にネット通販に取り組む例は多かったですが、少しやって売れないと、我慢できずにすぐやめてしまう方がほとんどでした。
長期的な視野を持って、焦らず、コツコツと運営していけるだけの余裕を持ってネット通販 事業に臨めたことが一番の要因だと思っています。
―540万円をかけてのサイトリニューアルを決断した背景と、その目的はなんですか?
柳田 敏正氏:
細かくあげるとたくさんありますが、その根本にあったのはozieのブランディン グのためです。
私どもが扱っているワイシャツは、他アイテムと同様に価格競争が非常に厳しい状況です。 しかし価格競争に参入しては、卸売のみで収益を上げていた時とおなじになってしまう。 そこでozieのファンを増やす、シャツといえばozieというくらいにまで知名度を上げて、 価格競争に巻き込まれないようにしたい。 ひいてはそれが事業を継続、発展させていくためになると考えたからです。
サイトリニューアルを外注にしようと思ったのは、自社内で中途半端なリニューアルを行 うだけではその効果は限定的だし、なにより通常業務を行いながら満足のいくリニューアルを行うことは不可能と思ったからです。餅は餅屋の考えで、外注したほうが効果がより上がるリニューアルは外注で、その分あい た時間は自社でしかできないサービスや商品開発に力を入れて時間を有効に使うほうがい いとの判断からです。
そのなかで540万円という金額だけが目に止まりますが(笑)、実際いままでそれだけの経費をネット通販事業にかけたことは過去に一度もなく、正直清水の舞台から飛び降りるく らいの決断でした。 それでも行ったのは、設備投資をしないで他店と差別化して収益を上げていくことはもはや難しいと思ったことがありますが、逆に考えれば長きにわたって運営してきたことで、 設備投資を適切に行うことのできるデータやログが蓄積されていたからこそできたとも言 えます。
弊社のような中小企業でもある程度の確実性を持って資金を投資できた背景には、蓄積してきたデータを分析・仮説・検証を行うことにより、リニューアルに活かすことができた ことが大きいです。
―さしつかえなければ540万円の内訳を教えてください。
柳田 敏正氏:
調査・分析に10%、企画・撮影等に35%、デザイン・制作に55%といったところです。
―リニューアルをきっかけにユニフォームなどの新事業など展開され、順風満帆かと感じますが、いままでで「最大の失敗」と「それをどう乗り越えたか」を教えてください。
柳田 敏正氏:
過去最大の失敗と言えるのは、出店しているだけで勢いで売れていた(と言って も過言ではないと思っています)2007年~2008年の時に売れていることにかまけて、先に 対する投資やしかけをほとんど何もしなかった事です。その結果、リーマンショックの影響をもろに受けて業績を落としていき、結果2009年に初 めて前年実績を割り込む不測の事態に陥りました。 精神的には非常に堪えた一年でした。
これを乗り越えたのはどうしていいかわからずセールを乱発したことでしょうか(笑)。 客単価をずるずる落としていきましたが、それでも前年比で96%の落ち込みで済んだこと が大きいです。 この時に無策ながら微減で持ちこたえられたことで、先を見通してしっかりと準備ができていれば、このようなリスクも乗り越えることができるはずと考えられたことが今につながってきています。
価格競争に巻き込まれずに、心穏やかに運営するにはどうしたらいいかと考え、本を読んだりセミナーに参加したりと、とことん情報をインプットしました。 その一環でこの時に会計のことを勉強しはじめたのですが、それが今に活きています。 というのもそれがなければ、540万円をかけたリニューアルを意思決定はできなかったと思っていますので。
無策で運営し、苦労したものの、持ちこたえられ、その後につなげることができたのが乗り越えられた要因だと思っています。
―今回の柳田様のご講演では様々な「想い」が込められていたと感じましたが、講演をお聴きになった会員様に「実践して欲しいこと」を教えてください。
柳田 敏正氏:
自分で行ってきたことしかお話できないので、抽象的なことしか言えないのが申し訳ないですが(笑、思ったらすぐ動く、これだと思ったことは継続していくことですね。
あとは店長や責任者、運営者が全面にでていくことでしょうか。これが自然と出来ればお店の信用を上げること=ブランディングにつながると思いますので。 どれもやろうと思ったら簡単にできることですので、ぜひ継続してやってみてください。
―当イーコマース事業協会は「売上げ向上・技術向上のための勉強、並びに会員相互の会員交流・情報交換を通じて、電子商取引を含む健全なる情報化を社会に普及させるこ とを目的とする」団体でありますが、入会間もない会員様、現在入会を検討している事業者様にエールをいただけますでしょうか?
柳田 敏正氏:
今回はじめてイーコマース事業協会さんの定例会に参加して思ったのは、みなさん勉強熱心で真剣だということです。 定例会後の懇親会で、ひっきりなしに入れ替り立ち替りたくさんの方が質問に来る事は今の今まで経験したことがありませんでした。なにせ飲み食いがほとんどできないくらい会話に没頭せざるをえない状況でしたから(笑)
ひとりで考えて悩むより、これだけ熱心な方々と一緒に学び、実践しあうことがご自身の事業運営に役立つと同時に、ECのさらなる普及につながるものと確信しております。
入会まもない方は継続して参加・勉強する、入会をご検討中の方はすぐ動く・入会することをおすすめいたします。
―このたびはご多用の中、ありがとうございました。
Ozie様の事業展開が積み重ねてきご経験、実績、データに基づく、まさに「商いの基本」を元に展開されることをわかりやすくお伝えいただきました。会員の今後の事業展開の糧になることと確信しております。Ozie様、柳田様におかれましては今後もますますご発展、活躍されますことをご祈念申し上げております。このたびは本当にありがとうございました。
○講演タイトル
「HPの裏側にあるもの~継続は力なり~ozieが考えるEC運営について」

○講師プロフィール
株式会社 柳田織物 専務取締役
柳田 敏正(やなぎだ としまさ)

1971(昭和46)年4月生まれ。現在41歳。

1994(平成6)年 3月に法政大学経営学部卒業。
同年 4月に株式会社バーニーズジャパン入社。

1999(平成11)年 3月に株式会社バーニーズジャパン退社。
同年4月に父が社長を務めるシャツメーカー:株式会社 柳田織物入社。大手量販店の営業を担当する。

2001(平成13)年 商品企画・生産管理を担当。
日本のみならず、中国に積極的に足を運ぶ。

2002(平成14)年 オリジナルのシャツを販売する
自社ドメインのオンラインショップを開設。BtoCへ進出。

2011(平成23)年11月 OSMC(オンラインショップマスターズクラブ)最優秀実践者賞受賞。

2012(平成24)年4月 第4回エビス大賞 大賞受賞。

現在専務取締役。
BtoB含む営業全般に目を通すものの、主はネット部門の責任者。 現在EC店舗4つとECを窓口とする法人営業に力を入れる。
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