有限会社フレックス
熊坂 泉様

2013年1月定例会でご講演をいただきました、
有限会社フレックス 熊坂 泉 氏にお話をお伺いしました。
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有限会社フレックス 取締役 パジャマ屋 店長 熊坂 泉 様
―なぜパジャマをメインの商材としてネット通販事業を始めようと思われたのですか?
熊坂 泉氏:
パジャマ屋の前身の母体会社にてアパレル、寝具メーカーのブランド商品を受託生産する事業をしておりました関係で、よりよい製品を作る為にお客様の直のお声を聞く為のアンテナショップとしての自社サイトを1997年に展開していましたが、まだショップとして機能しておらず、細々と運営するカタログのようなサイトでした。

丁度その頃、不景気のあおりで1~2万円もするブランドパジャマがデパートなどで売れなくなり、前身の会社の受託量も減少していく中、先代社長が生産事業の廃業を決断し、現社長がパジャマの生産に関するノウハウを活かしながらネットショップに専念していく事を決めました。
―他のお店とは違うこと、ということでギフト市場をターゲットとされましたが、かなりマーケティングをされた結果だったのでしょうか?
熊坂 泉氏:
いいえ。市場で流通している一般のパジャマ(単価2~5千円)と、私どもの扱う高級部類のパジャマの値段(平均単価1万円程)のパジャマを買うと言う動機を顧客目線で考えた時、必然的にギフト市場だと直感で。(笑)
単なる思いつきですが、高額なパジャマにもこだわっていただける富裕層のお客様以外にも、マーケットを拡げるには、一般の顧客目線で考える事がなによりもマーケティングに役立ちます。
―「ラッピングが営業をしてくれる」というのはすごい名言だと思わされたのですがこう言い切れるようになるまでのご苦労など、お聞かせください。
熊坂 泉氏:
自分が贈り物をする時、あるいは、いただいた時に、センスのあるラッピングでいただいた時と、そうでもない時との気持ちの高揚感の違いは歴然としています。

贈り物と言うものは、「モノ」を贈る行為よりも、「キモチ」を贈る行為なのだと言う事だと常々思っておりましたので、相手がどれだけ自分の事を思って贈り物をして下さったかを実感として受け取れるラッピングに関しては、どうしてもこだわりたい部分ではありました。

ただ、それをショップの立場としてみると、一般的には「モノに付いてくる無料のサービス」と言う捉え方がある上に、経費はかなりかさみますので、ラッピング資材をゴミにせずに使いまわしていただけるような資材にしてみたり、出来るだけ手間のかからないような資材を探してみたり、それはそれは試行錯誤の連続でした。

経費がかかると言う事で、社長より廃止案は度々あったのですが、(笑)お客様からお便りやレビューをいただいて、梱包用の箱を開けた時の感激度が私どもにもキチンと伝わって、それがリピートしてご注文いただけるひとつの要因だと知った時には、「あぁ、多少の持ち出しはありだな。」と思いました。

例えば、ご結婚式の花束贈呈の代りに、弊社のラッピングしたパジャマを贈呈してくださると言うご注文が度々あるのですが、そのご結婚式に出席なさった方がラッピングを見て、ご注文をいただく事もあったりします。
中には、受け取った贈り先さまが感激のあまり、仏壇や部屋の中にしばらく飾って眺めていて、なかなかパジャマを着てくださらないと苦笑しながらご注文者さまがメールをくださったり、ご注文者さまではなく、贈り先さまから涙ながらにお礼のお電話をいただいたりする事も少なからずあり、確かな手ごたえを感じています。

贈り物を受け取った方が感激してくださり、弊社を探してご注文をいただけるラッピング新規顧客獲得率は、商品自体の営業率と共に、かなりのポテンシャルがあると思っています。

そして、ご注文者さまのリピート率は40%と、アパレルEC業界では驚異的な数字を叩き出しております。

贈り先さまのお喜びの声こそが、ご注文者さまの喜びであるのですよね。
―「気持ちや想いの受け渡しを代行する」のがギフト対応というお言葉もありましたがスタッフさんの管理や育成に関係してくるかと思います。なにか気をつけているところはありますか?
熊坂 泉氏:
まず、スタッフ採用の際は、人柄を見ます。…と言いたい所ですが、そう簡単に見分けられるものでもなく…。(笑)
元々最初から従事してくれているスタッフの多くが友人であったりしましたので、「気持ち」を大事にした対応が何故必要なのかを感覚的に理解してくれていました。そして、後から入社したスタッフの素質の部分を、丁寧に育ててくれるのです。

もちろん、常々「何事も『相手』の立場で物事を考えて進める」と言う事は、伝えています。
社内でも日常的に「優しくされて気持ちの悪い人はいない」と言う事を体感してもらえるような雰囲気作り。
そして、もし対応の難しいクレームなどにおいては、常にお手本となれるような対応をし、実例としてスタッフに報告し、対応の共有を図っています。

弊社の経営理念である「みんなの心が温かくなるために」を実施する事がミッションなのです。
―リピーターの確保と、口コミでの新規来店など運営的には順風満帆かと感じますが、いままでで「最大の失敗」と「それをどう乗り越えたか」を教えてください。
熊坂 泉氏:
失敗…と言えば、経営に関しては、常に失敗し、その都度乗り越えている感が…。
「トライ&エラー」ならぬ「エラー&トライ」の連続ですね。
7回転んで8回起きました。(笑)

「贈りもの対応」と言うカテゴリで具体的にいえば、
お客様はサプライズの贈り物を検討されている方も多く、弊社では基本的に「ご注文者様とお届け先が同じ場合」はご家族へのサプライズプレゼントの可能性を考慮して、ご自宅へのお電話での連絡は厳禁としています。

…が、お届け先が違う「直送」のご注文だったお客様だったので、指定日の関係上、どうしても至急連絡を取らなければならない為、ご注文者時に記載されていたご自宅へお電話をさせていただいたところ、奥様であろう方が電話口に出られ、ご主人さまに聞いてからご返答いただけるとの事。
連絡が取れてよかった。…と安心していた矢先、ご注文者様よりお電話をいただき、直送先のお相手は奥様には知られたくない事情の関係であると。
「なんという事をしてくれたのだっ!おかげで離婚話が進んでいる!どうしてくれる!訴えてやるっ!」
…と、もの凄い剣幕でお叱りを受けた事がございます。

もちろん、弊社ではお詫びするしか方法がなく、とにかくお客様のお話しを聞き、私どもに出来る事がございましたら、出来る限りの事をさせていただく姿勢を貫くしかなかったのです。

◆お客様にお詫びの対応をさせていただく時の心得
 1.とにかくお詫びする。心よりお詫びする。
 2.とにかくお話しを聞く。親身になって聞く。
 3.お客様の心情をすばやく理解して、何故お怒りなのか、相手の立場に立って理解する。
 4.それが例え、お客様都合の理由であっても、運送会社の責務であっても、
   心の片隅で「こっちは悪くないんだけどなー」と思った瞬間、文字や声でそれが伝わる。
   お客様はどこに怒りをぶつけたらいいのかわからずに錯乱している事も多い。
   理由はどうでもよいので心してお詫びする。
5.話を聞いてこちら側が理解を示せば、お相手は少し落ち着いてくる。
6.お客様がどうしたいのか、どうさせていただくのが一番いいのかを聞く。

 大抵のクレームは上記の対応で、解決出来ます。
 先の離婚訴訟間際まで発展したとおっしゃるお客様も、お電話とメールでのやり取りで
 最後には、ご自分の配慮も足りなかったと、反省なさっていただけるくらいまでは
 落ち着いてくださいました。

6年ぐらい前の出来事ですが、それ以来、弊社では注文フォームの中に
【緊急連絡先のお電話番号】と【ご連絡可能なお時間】をご記入いただく備考欄を設置し、
【ご連絡はメールのみ】をお選びいただいた方は、ご注文後、必ずメールをチェックしていただくよう、喚起させていただいております。
※詳細は弊社注文フォームをご覧ください。
―今回のご講演では様々な「想い」が込められていたと感じましたが、講演をお聴きになった会員様に「実践して欲しいこと」を教えてください。
熊坂 泉氏:
講演の中で、企画、ページ編集、受注業務、ラッピング、配送、どの場面でも、繰り返しお客様目線での対応をさせていただいていると申し上げましたが、過剰なサービスをするべきだとは思っていないのです。
お客様に提供したいのは、自己満足のサービスではなく、「おもてなしの心」です。

自動販売機のように、注文ボタンを押せば商品がポンと送られてきてもよいものと、そうでないものとの差を皆様の商材の中で考慮し、どこまでをサービスとするのかを検討なさる事をオススメします。

弊社でも、システムで出来る所は徹底的にシステム化し、効率化出来たところで、人の手の温もりが提供できる作業は人的作業にしています。
徹底する事が「強み」になるのだと思います。
―当イーコマース事業協会は「売上げ向上・技術向上のための勉強、並びに会員相互の会員交流・情報交換を通じて、電子商取引を含む健全なる情報化を社会に普及させることを目的とする」団体でありますが、ご講演を終了してみてのご感想や、定例会の印象などお聞かせいただけると幸いです。
熊坂 泉氏:
私共も、イーコマース事業協会のような、情報交換が出来る勉強会や団体を通して、いろいろな事を吸収し、励ましあいながら12年間運営してきました。

このEC業界はまだまだ新しい業界です。
「出来ない。不可能。数字的に採算が合わない。」と思いこんでいる事でも、実際にやってみないとわからない事も多く、実際、結構イケる事が多いのです。

そんな中、情報こそが宝です。孤独の中ではアイディアも湧きにくいですし、こうした会の中での情報共有は、本当に意義があるばかりか、モチベーションもあがります。

優良店舗さんが出来る対応、企画は、自社でも可能。
(もちろん、自社に落とし込むには、血のにじむような工夫が必要ですが(笑))
そんな気持ちで邁進してきました。
まるっきり真似をするのは厳禁ですが、優良店舗さんのやり方を参考にして、どんどん応用し、オリジナリティのある自社企画をなさっていってください。
○講演タイトル
「小さい会社だからできること」

○講師プロフィール
有限会社フレックス 取締役
パジャマ屋 店長 熊坂 泉氏

設計事務所・インテリアデザイン事務所などを得て、1991年結婚。
10年間専業主婦で子育てに専念。

料理サイトにレシピアップを趣味にしていたのを夫に見初められ、ネットショップ開業の手伝いをするハメに…。

2001年1月 HTMLさえ解らない状況の中、片手で当時1歳の娘に授乳しながら、片手でキーボードを打つ離れ業を駆使しつつ、独学で楽天市場出店・運営。

他のショップが出来ない(やらない)事をやる!がモットー。
その為に、独自のシステムを考案し、
機械的に出来る事は徹底的にシステム化。
顧客目線のWEB上の対面接客でギフトショップのノウハウを蓄積していく。

オリジナルパジャマ専門店「パジャマ屋」4店舗
ベビー商品専門店「petite fee」2店舗のWEBショップ6店舗運営

主たる講演先
工学院専門学校 講師
楽天市場 2010カンファレンスイベントスペース ギフト講座
楽天市場 2011カンファレンス東京会場
楽天市場 2011カンファレンス大阪会場


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